「琵琶資料館」ページでご説明しております様に、琵琶芸術は永い歴史を持った日本の伝統芸能ですが、昭和十年あたりから昭和二十年の第二次世界大戦終結を経て昭和三十年頃に至る間は、いわゆる歌舞音曲の類と見なされ逼塞(ひつそく)状態にありましたが、やがて社会・経済の復興と共に再び伝統芸術としての再起を果たして今日に至っております。
とは申せ、昭和三十年代以後も決して容易なる道のりではありませんでした。近年の多岐多様にわたる娯楽・芸能やスポーツ等のはざ間にあっては、古典芸能と見なされる琵琶芸術は決して往時の隆盛を取り戻した訳ではなく、伝統芸術を後世に残すべく、斯道(しどう)に励む諸氏は諸派をこぞっても数千人に止まるものと思われます。
筑前琵琶の一流儀である橘流 日本橘会においては近年、往年の熟達者に伍して十代・二十代の若い世代の方々の習得者が増してきて世代交代を果たしつつあります。これら若い方々は概して音感にも勝れ、琵琶の弾奏の習得も早く、目を見張る次第です。
やはり幽玄なる琵琶の音には、我々日本人の民族的共感を呼覚ますものがあるものと思われます。『温故知新』(故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る)とのことわざがありますが、乱れた現世相を憂える今日、理性と倫理、道徳観に満ちた時代の再来を望む方は多いものと思われます。
皆様、今一度伝統ある芸術を顧(かえり)みてみませんか。
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